ボクは・・・なんで生きてんの? シンジは生きる意味をどこにも見出せない


エヴァンゲリヲン新劇場版:序より


エヴァに乗ったものの、あっという間にやられちゃったシンジ。まあよけるヒマなしの攻撃だったから、仕方ないとは思うけど。シンジにしてみれば、そんな風に思えるわけない。

 

病院のベッドで眠っているときの、電車に乗ってるシンジの回想シーン。回想というより夢と言った方がいいかな。

 

 

自分がここにいる理由さえわからなくなり、存在意義もないと感じるシンジの心

 

シンジ
「イヤなんだよ、エヴァに乗るのが、うまくいって当たり前 だから誰も褒めてくれない。失敗したらみんなに嫌われる。ひどけりゃ死ぬだけ。なんでボクはここにいるんだ・・・何か変わるかもって、何かいいことあるかもと思ってここに来たんだ。 イヤな思いするためじゃない」

レイ  
「そうやってイヤなことから逃げ出して ずっと生きていくつもり?」

シンジ 
「生きる・・・なんで生きてんの? ボクは・・・生きていてもしょうがないと思っていたじゃないか。父さんもミサトさんも誰もボクをいらないんだ。エヴァに乗らないボクは必要ないんだ。だからボクはエヴァに乗るしかないんだ。だからボクはここにいられるんだ。だけど、エヴァに乗ると・・・」

ここでハッとして目が覚める。そこにレイがいることに驚く。

 

電車の中でレイと話しているんだけど、夢の中、無意識の声だと思えば分かりやすいだろう。「イヤなんだよ、エヴァに乗るのが、うまくいって当たり前、だから誰も褒めてくれない」シンジは本当は褒めてもらいたいんだ。

 

でもエヴァに乗ったところで、うまくいって当たり前だから誰も褒めてくれない。裏を返せば、うまくいかなかったら誰にも必要とされないんじゃないか、という恐れがある。

 

自分が誰にも必要とされていない、というのは潜在的な恐怖だ。誰にも必要とされなかったら、自分がここに存在する意味が見出せないから。

 

シンジは母親を亡くしてから、ゲンドウにも捨てられたと思っているから、余計その思いが強いのかもしれない。

 

「失敗したらみんなに嫌われる。ひどけりゃ死ぬだけ。なんでボクはここにいるんだ・・・」うまくいって当たり前だと思ってるから、失敗したらみんなに嫌われて自分は必要とされなくなる、と思っている。

 

現実には失敗してみんなに嫌われたわけじゃないんだけど、嫌われるのが怖ければそこに焦点を当ててしまい、恐れはどんどん増していく。

 

ひどけりゃ死ぬだけで なぜ自分がここにいるのかも分からない。

 

人は潜在的に恐怖心を持っているから、不安にもなるし、その不安を少しでも軽くするために頑張ったり努力したりする。

 

これは意識で認識しいているかどうかは別だ。ほとんどの人が、明日もあさっても普通にやってくると思ってるし、10年後や20年後、心配性な人は老後のことまで考えるだろう。

 

今はまだやってきてはいない先のことを考えて、病気になったときのためにと保険に入る。これは潜在的な恐怖が、保険に入ることによって緩和されるんだ。

 

この先何かあっても保険に入っているから大丈夫だと、安心できるんだ。保険に入ったからって、潜在的恐怖がなくなるわけじゃないけど、恐れは緩和される。

 

保険に入っているという安心感が、恐れに焦点を当てることを少なくする。これはあくまで例えで言ってるだけだから、いいとか悪いとかそういう次元の話をしているわけではない。

 

生きる意味―人生にとっていちばん大切なこと

 

本当は認められたいという、潜在意識の承認欲求はなくならない

 

でもシンジは期待してる。
「何か変わるかもって、何かいいことあるかもと思ってここに来たんだ」


シンジにしてみれば、自分を捨てていった父さんに呼ばれて来たんだから、ゲンドウに必要とされていると思いたいだろうし、何か変わるかもしれない、って期待したくもなる。でもやっぱりイヤな思いしかない。

 

「イヤな思いするためじゃない」って言いたくもなるだろう。シンジにとってはイヤな思いしかないってことだ。

 

でも レイに言われてしまう。
「そうやってイヤなことから逃げ出して ずっと生きていくつもり?」


レイにしちゃ言うね、と思っても夢の中だからね。個人的には逃げたかったら逃げればいいと思うし、逃げたくないんだったら戦えばいいと思うだけだけど。

 

逃げるのも戦うのも、どっちが正しいとか、どっちがいいとか悪いとかはないと思うから。逃げてみて初めて分かることもあると思うしね。

 

ときに無意識は夢を見せることによって、本人の意識に認識させようとする。夢では分かりやすいように、レイがシンジに問いかけているが、深層心理ではシンジ自身が、シンジに問いかけているのだろう。

 

夢はときとして、無意識を本人の意識に上げるために見ることもある。シンジは夢の中で自分の気持ちを確認しているってことだろう。 

 

「生きる・・・なんで生きてんの? ボクは・・・生きていてもしょうがないと思っていたじゃないか」なんで生きてるのか?

 

生きていてもしょうがないんじゃないか?

シンジは生きている意味が見出せない。

「父さんもミサトさんも誰もボクをいらないんだ。エヴァに乗らないボクは必要ないんだ。だからボクはエヴァ乗るしかないんだ。」

 

人は人に必要とされないと、生きる意味さえ見出せないのかもしれない。シンジはそれをよく表している。

 

人に必要とされようとか、そんなことは関係なく自分自身を認められればいいんだけど、人間と言うのは、それがなかなか出来ない。

 

だから人は一人では生きられない、というのかもしれない。

 

「 父さんもミサトさんも誰もボクをいらないんだ。エヴァに乗らないボクは必要ないんだ。だからボクはエヴァに乗るしかないんだ。だからボクはここにいられるんだ。だけど、エヴァに乗ると・・・」

 

シンジはエヴァに乗ることで、やっと必要とされていると感じることが出来た。

 

だから本当はエヴァになんか乗りたくないのに、自分の選択は乗ることしかないと感じる。

 

それは誰にも必要とされないことへの恐れがあるからで、承認欲求に他ならない。自分自身の潜在的な恐れに気付いている人は、意外と少ない。

 

このシンジの夢の中の対話は、気持ちを語っているのでコレが感情だと認識する人もいるかもしれないけど、ここでは気持ちを語っているだけで、ジンジ自身が夢の中で感情を体験しているわではない。

 

エヴァには乗りたくないけど、乗らなければ誰にも認めてもらえない、誰に強制されるわけでもなく シンジ自身が自分で乗ることにしたんだけど、その過程の中でシンジが体験した感情を、振り返って整理しているイメージだ。

 

無意識は自分自身が感じたことを意識できちんと認識してほしくて、夢として見せる。

 

「承認欲求」の呪縛 (新潮新書)