自分は守られる価値がないと思うシンジと対照的に あなたは死なないと言う確固たる自信の綾波レイ


エヴァンゲリヲン新劇場版:序より


またエヴァに乗ることを選択したシンジ。
いよいよラミエルとの戦い、ヤシマ作戦、戦いの前に

 

 

再びエヴァに乗ることを決めたシンジだが、恐れは無くなることがない

 

リツコ 
「ゆえに初号機は 狙撃位置から移動できません」

シンジ 
「逃げられないってことですか?」

リツコ
「そうよ」

シンジ 
「もし外れて敵が打ち返してきたら」

リツコ 
「今は余計なことは考えないで。一撃で撃破することだけを考えなさい」

シンジ 
「じゃないと 大ピンチってことですか」

レイ  
「あたしは、あたしは 初号機を守ればいいのね。分かりました」

ミサト 
「時間よ。ふたりとも着替えて」

シンジとレイ 
「はい」「はい」

プラグスーツに着替えながら
シンジ 
「これで・・・死ぬかもしれない・・」

レイ  
「いいえ、あなたは死なないわ。わたしが守るもの」

シンジ 
「ボクに守る価値なんてないよ」

ミサトから 本部広報部宛に届いていた留守番電話に 
トウジ 
「あのぅ鈴原です。碇やシンジと呼ばせてくれや。シンジ頼むで」

ケンスケ
「え~相田です。碇、頑張れよ」
少しだけシンジの表情が変る。

エヴァに乗る直前
シンジ 
「綾波は なぜエヴァに乗るの?」

レイ  
「絆だから」

シンジ 
「絆・・・?」

レイ  
「そう、絆」

シンジ 
「父さんとの・・・?」

レイ  
「みんなとの」

シンジ 
「強いんだな、綾波は」

レイ  
「あたしには 他に何もないの」

その言葉にシンジは驚く。シンジが思ってもいなかった言葉だったんだろう。

レイ  
「時間よ、行きましょう・・・さよなら」

 

シンジらしいね。
「ゆえに初号機は 狙撃位置から移動できません」

「逃げられないってことですか?」

「そうよ」

「もし外れて敵が打ち返してきたら」

「今は余計なことは考えないで。一撃で撃破することだけを考えなさい」

「じゃないと 大ピンチってことですか」

 

リツコの
「ゆえに初号機は 狙撃位置から移動できません」に「逃げられないってことですか?」って切り返している。

 

本当はエヴァになんか乗りたくないんだから
「もし外れて敵が打ち返してきたら」とも言う。

 

そりゃ腹の底から決めてるわけじゃないから心は揺れる。もし~ならと最悪なことも考える。

 

ネガティブと言えばそれまでだけど,元々そこまでの覚悟なんかしてないんだから仕方ない。

 

対人恐怖・醜形恐怖―「他者を恐れ・自らを嫌悪する病い」の心理と病理(オンデマンド版)

 

価値がないと思っているシンジに「わたしが守るもの」というレイの言葉は。思いもよらないものだった

 

レイはいつものごとく冷静だ。
「あたしは、初号機を守ればいいのね。分かりました」と、さらっと言ってる。プラグスーツに着替えながらの会話では
「これで・・・死ぬかもしれない・・」
「いいえ、あなたは死なないわ。わたしが守るもの」
「ボクに守る価値なんてないよ」


シンジは死ぬかもしれないと思っているのに レイはそんなことこれっぽっちも思っていない。わたしが守るもの、と言い切っている。レイは自分の命に対してまるで執着がない感じだ。

 

そしてシンジは「ボクに守る価値なんてないよ」と。

 

死ぬのは怖いけど、自分には価値がないって思ってる。

 

ゲンドウからも捨てられてひとりぼっちで、誰にも必要とされていない。でもエヴァに乗るのはシンジにしか出来ないと言われる。

 

エヴァになんか乗りたくもないし、なぜ自分なのかも分からないけど、みんなはシンジがエヴァに乗ることを期待しているのが分かる。

 

自分はエヴァに乗ることで必要とされていると、かろうじてそこに存在意義を見出している。 

 

心は複雑だ。誰かに認めてもらいたくて やりたくもないことをやるわけだから。もちろんシンジは、意識でここまで認識しているわけじゃないだろう。

 

その後 本部広報部宛に届いていた留守番電話を聞く。
「あのぅ 鈴原です。碇いやシンジと呼ばせてくれや。シンジ頼むで」
「え~相田です。碇、頑張れよ」


これを聞いたとき 少しだけシンジの表情が変わる。こんな自分でも,頼ってくれる友達がいる。

 

ちょっと嬉しいけど、なんで自分なんかに・・・という思いが交錯したんだろう。心は複雑なままだ。そんな簡単に切り替わるものじゃないから。

 

あなたが生きづらいのは「自己嫌悪」のせいである。 他人に支配されず、自由に生きる技術

 

何もないと思っているレイにとって、何よりも大事なのはは「絆」だった

 

エヴァに乗る直前
「綾波は なぜエヴァに乗るの?」

「絆だから」

「絆・・・?」

「そう、絆」

「父さんとの・・・?」

「みんなととの」

「強いんだな、綾波は」

「あたしには 他に何もないの」

 

レイの言葉にシンジは驚く。シンジから見たレイはゲンドウとも親密だし、他に何もないの、なんて言葉は思ってもいなかった言葉だ。

 

シンジからしてみれば、レイの方がよほどみんなに必要とされているし、生きている価値があるように見える。絆だけでエヴァに乗るなんて信じられない。

 

人は自分の主観で他人を見る。シンジはシンジの感覚でレイを見ていたわけで、それがレイの言葉によって、今まで自分が見ていたレイとは違う、ってことに気付く。

 

自分がが勝手に思っていたレイとは違うレイを見た、ってことになる。

 

レイは自分の感情が分からないように見えるけど、エヴァに乗るのは絆だったんだ。

 

自分の心や感情を意識で認識していなくても、絆以外何もないと思ってる。

 

レイはエヴァに乗ることでみんなと繋がっていられる、と思っている。みんなと繋がることを望んでいるってことだ。

 

裏を返せば 繋がらないことに恐怖があるってことになる。もちろんレイ自身はそんなこと認識していない。

 

人はどこかで繋がっていたい。ひとりぼっちというのは孤独だし寂しいし、誰にも認めてもらえないような気がして、生きる意味さえも見いだせなくて耐え難いことなんだろう。

 

その繋がりを自分の外に求めるか、自分の内に求めるか、のどちらかなんだと思う。

 

繋がりを自分の外に求めれば、人からの承認がほしくなる。繋がりを自分の内に求めれば、そこには全てがあることに気付ける。

 

ほとんどの人は繋がりを外に求める。

 

繋がりを内に求める人は少ないだろう。

 

それがいいとか悪いとか、どちらが正しいとか間違っているとかのジャッジは、本人に委ねられる。そのジャッジさえしない、という選択肢もあるんだ。

 

レイは「時間よ、行きましょう・・・さよなら」の言葉とともに行ってしまう。

 

さよなら、と言われたシンジは返す言葉もない。レイは、生きることに対する執着が全くないみたいだ。あのレイでさえ 生きることより繋がりを求める。

 

人は何かと繋がっていないと生きること自体難しいのかもしれない。

 

本当は、心理学者ユングの言うように意識に上がらない無意識のどこかで、 切れることなく繋がっているかもしれないのに・・・

 

無意識のどこかで繋がっているんだとすれば 外に求めず内に求めるのが一番の近道なのかもしれない。

 

ユング 心の地図 新装版