逃げようと思っていたシンジの決断は、簡単に覆される


エヴァンゲリヲン新劇場版:破より


第10の使徒襲来
レイがライフルも持たずに出撃して、ミサイルごと突っ込んだところ。

 

2号機に乗っていたマリは、ザ・ビーストをかけて、ATフィールドを破りきったところで力尽きてしまう。

 

そしてシンジが避難していた場所に、2号機とともに落ちていく。
驚くのはシンジの方だ。
だって2号機にはアスカじゃなくてマリが乗っていたから。

 

 

シンジとは対照的なマリの登場

 

マリ  
「あぁ~ イテテテ・・・死んじゃうとこだったにゃ、あれっ!なんでこんなとこにいんの?一機足りないと思ったら、そうゆうことか」

シンジ 
「ボクはもう、乗らないって決めたんだ。」

マリ  
「エヴァに乗るかどうかなんて、そんなことで悩むヤツもうるんだ。なら早く逃げちゃえばいいのに。ホラ、手伝うからさ」

シンジ 
「乗らないって決めたんだ!乗らないって決めたんだ!乗らないって決めたんだ!」

マリ  
「だけどな、そうやっていじけてたって、何にも楽しいことないよ」

シンジ 
「アッ!」

2号機に乗っているマリに、シンジは外に出してもらうんだけど、ああ・・・綾波レイが使徒に食われているとこ、
バッチリのタイミングで見てしまう。

マリ  
「0号機と融合してる。パイロットごと吸収してしまったんだ。キミも死んじゃうよ、早く逃げなよ。」
するとシンジはかけ出す。

マリ  
「ありゃ、いっちゃったか・・・」

シンジは必死に走る。
一方ネルフでは、いまだ初号機のダミーシステムは起動しない。

ゲンドウ
「なぜだ・・・なぜ私を拒絶する? ユイ・・・」
そこへシンジがやってくるよ。

シンジ 
「乗せてください!ボクを・・・ボクを・・・この初号機に乗せてください!」

ゲンドウ
「なぜ、ここにいる?

シンジ 
「父さん!ボクはエヴァンゲリオン初号機パイロット、碇シンジです!」

やっぱりシンジは、エヴァに乗った。

 

マリは今までのエヴァの登場人物にはいないタイプだ。
「エヴァに乗るかどうかなんて、そんなことで悩むヤツもうるんだ」と言う。


自分の目的が達成されれば、あとはどうでもいいということなのか・・・

 

そしてシンジにも
「早く逃げちゃえばいいのに」と言っている。

 

なぜエヴァに乗らないの?とは聞かない。

 

「一機足りないと思ったら、そうゆうことか」と自分で勝手に納得している

 

人は人、自分は自分ということなのか、シンジとは対照的だ。

 

マリの存在自体のバックボーンがわからないし、解明されることがあるのかどうかナゾだ。

 

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シンジの決断は、感情によって突き動かされる

 

シンジは逃げることにしたのにまた戻る。まあ、レイが使徒に食われているとこ見ちゃったら、居ても立っても居られない。

 

マリに
「キミも死んじゃうよ、早く逃げなよ」
と言われるけど、そんな言葉も耳に入らない。

 

「乗らないって決めたんだ」×3、
って言ってるけど、考える隙もなく体が走り出す。言っていることと心は別だ。

 

シンジは逃げるとき、もうイヤだからエヴァには乗らないて考えてるけど、レイが使徒に食われているのを見て走り出す時は、今行かなければ後で後悔するかもしれないとか、やっぱり逃げようかとか、そんな考えはどこかに吹っ飛んでない。

 

突き動かされるように走り出す。これ、心が動いたからに他ならない。理屈や考えではなく、感情に突き動かされてる。

 

シンジは、ダメダメと言われているけど、彼のナイスなところは、自分の感情を無かったことにしないこと。

 

人の心理ってうまく出来ていて、自分が受け入れられないと思ったり、これ以上耐えられないと思うと感情に蓋をする。

 

ようするに、無かったことにしてしまう。それは、その環境で心が壊れないように防御するひとつの方法だ。


なかったことになんかなるの?と思うかもしれないけど、思考や理屈は、心が壊れてしまったら出番が無くなってしまうから、心は壊れてほしくないわけで、うまく理屈をつけてなかったことにして納得できる。

 

新世紀エヴァンゲリオンのテレビシリーズで、アスカの心が壊れちゃうのは、心に蓋をしきれなかったいい例だ。

 

でもそれは、感情を感じている全うな証拠。それは良いとか悪いとかではなく、ただ感じているだけだ。アスカに関してはまた別の機会に。


感情を素直に感じる、という観点からみると、シンジは人の心の揺れをものすごくうまく表している

 

。アニメでここまで心理描写しているものは他に知らない。普通アニメの登場人物は、もっとストレートで、誰が見ても解りやすいものが多い。

 

新・脳と心の地形図 思考・感情・意識の深淵に向かって [ リタ・カーター ]

 

相変わらず冷静に見えるゲンドウの心のうちは定かでない

 

そしてゲンドウもおもしろい。

 

初号機のダミープラグが、いくらやっても起動しない。

理論的にダミープラグは起動するという確信があるのか、何回もやり直すが起動しない。

 

ゲンドウは表情には出さないけど、あせっているだろう。

 

「なぜだ・・・ なぜ私を拒絶する?ユイ・・・」

と思わず 言っている。ゲンドウにしては珍しい。

 

唯一、ユイに対してだけは、ゲンドウも感情のかけらが見える。

 

しかしシンジに対しては

「乗せてください!ボクを・・・ボクを・・・この初号機に 乗せてください!」

と言われたときに

「なぜ ここにいる?」と返している。

 

普通親だったら おーシンジ、帰ってきてくれたかとか、よく戻ったなと言いそうなもんだけど、ゲンドウは言わない。

 

表情には出さないが父親として何か思うところがあるのか、シンジに対しては、感情が動くようには見えない。

 

それはユイをシンジに取られてしまった、という思いがどこかにあるのかもしれない。

 

唯一の自分の理解者であったユイが、シンジを産んで母親になってしまったとき、シンジに対して嫉妬のようなものがあったのも事実だろう。

 

母親を亡くしたシンジが、父にいくら求めても、父のゲンドウはユイを亡くしたことのダメージが大きく、シンジの心情まで思いやるゆとりはなかったのか。 

 

元々子どもに興味がないのかは分からないが、シンジにとっては唯一の父親であり、一番認めてほしい人であることには変わりない。

 

シンジの承認欲求は、ゲンドウによって満たされることはない。

 

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